ずいぶん簡単に言ってくれるけど、誰が取り出すの?
ぬいぐるみを奪えば「赤い人」は怒ってしまうけど、ナイフや包丁で切り裂くのはどうなのかな。
どちらにしてもかなりの危険がつきまとうけど。
『赤……が、東棟三……われました。皆さん……つけて下さ……』
迷っている間にも、校内放送が流れてしまった。
西棟の二階に上がり、生産棟に向かって小走りで駆けだす。
まだ、誰がどこに向かうのかも決まっていないのに。
渡り廊下から生徒玄関の前の広場を見下ろすと、まだ武司と日菜子は起き上がってはいなかった。
生産棟に入り、階段の前にやってきた私達。
ここで、一階に行くふたりとカラダを取り出す人とに分かれる。
これを決めるだけで時間がかかりそうなんだけど……予想外にそれは早く決まった。
「ぼ、僕が行くよ」
うつむいていた小川君が、申し訳なさそうに小さく手を上げたのだ。
自発的に何かをするところを見た事がない小川君が、初めて自主性を見せた。