「小川君、あなたは袴田君が偶然ではなく、中島君に殺された事を知っていたのね。だけど言わなかった」
振り返りもせず、階段を上りながら小川君を責めるような口調で話す。
それに驚いたのか、私の隣で小川君がビクンと揺れた。
「ゴ、ゴメン……黙ってないとまた殴られるから。怖くてさ……」
身体中にアザがあるんだもんね。
毎日暴力を振るわれていたなら、怖いと思って当然だよ。
「それがあなたのダメなところよ。早く言っていれば、今日、袴田君は死ななかったかもしれないでしょ?」
「う、うん……ごめん」
悲しそうな表情を浮かべて、うつむいてしまう。
そんな小川君にも、遥にも、私は何も言えなかった。
何とかこの重い空気をどうにかしないと。
「ね、ねぇ。今日はどこを調べるの? 工業棟はもう終わったんだよね?」
あからさまだったかな……とも思ったけど、あまり責められると小川君がかわいそうだから。
「……わかってるでしょ? 誰かひとりはぬいぐるみの中からカラダを取り出すのよ。後のふたりで、生産棟の一階を調べましょ」