こんな時、高広がいてくれれば、殴ってでも中島君を止めただろうけど、私は怖くて動けなかった。


「最初の日に袴田が死んだのは、俺が殺したんだよ。いつもいつも勝手な事をして俺をバカにして……チャンスだと思ったね」


動かなくなった武司を見下ろして、腹を踏みつけるその顔は……いつもの冷静な中島君の顔ではなかった。


夜の校舎は負の感情を増幅させる。


そんな言葉では足りないくらいに、狂気に満ち溢れていた。


そんな私達などお構いなしに、生徒玄関のドアが開く。


始まる前からふたりも死んでいて、今日はもうなしにしようよと心の中で呟いても、まったく意味がない。


「……明日香、小川君。行くわよ。悲しんでる暇は私達にはないの」


中島君を無視して、私に歩みよった遥が手を差し伸べる。


それはわかってる。


今日が終われば、ふたりは生き返る事も。


でも、ショックが大きすぎて、そう簡単には割りきれない。


遥の手につかまり、ゆっくり立ち上がった私は、悲しみを拭えないまま日菜子の亡骸から離れた。


いずれ、操り人形となって校舎を動き回るだろうけど、私にはどうする事もできなかった。


校舎に入り、遥の後を歩いて西棟に。