そんなはずがない。
ここにいるはずがないのに……どうして。
携帯電話の画面の明かりを向けると、ぼんやりと浮かび上がる小さな顔。
真っ白で生気のないその人影は……「赤い人」。
いや、似てるけど違う。
ぬいぐるみは持ってないし、血がついているわけじゃない。
これは……美紀?
「お姉ちゃん。助けてほしいの」
……私を殺そうとか、危害を加えようとしているわけではなさそうだけど、油断はできない。
学校以外で、美紀も美子も見た事がないのに、どうして私の前に現れたのか。
「た、助けてほしいって……どういう意味?」
何がどうなっているかわからないけど、私は美紀を刺激しないように、できるだけ優しく、声を絞り出した。
喉が渇く……呼吸が荒くなる。
予測していなかった事態に、心臓の鼓動が早くなる。
まるでこの身体が自分のものじゃないみたいで、思うように動いてくれない。
美紀が近づいて、崩れるように床に座り込んだ私は、もの悲しそうな表情を浮かべる美紀を見上げた。
「美紀ちゃんの家にね、黒くて怖い人がいるの。お父さんに呼ばれてから、ずっと家にいるの」