悲しそうにも、怒っているようにも見えるその表情は、何か嫌な予感がする。
まさか遥があんな声を出すなんて思わなかったから、高広も留美子も何事かと教室に入った。
他の人達が見守る中、遥につかまれていた幸恵はその手を振り払い、こちらに向かって歩きだしたのだ。
廊下に出るのだと思い、通路を開けた私の目の前で……幸恵は立ち止まった。
そして……。
「ねえ明日香、私のカラダを探して」
「う、嘘……でしょ?」
かすかに笑みを浮かべてそう言った幸恵に、私は尋ねた。
でも、幸恵は何も答えてくれなくて。
遥に頼まれた時と同じように、皆を無視して廊下へと出ていったのだ。
これは、何か悪い冗談に違いない。
「赤い人」の怪談話は皆知ってるし、怖がらせようと利用する生徒がいるから。
幸恵もそうなんだと信じたい。
信じたいけど……今、廊下に出たばかりの幸恵が、どうしてもういなくなっているの!?
それに、遥も言っていた……「冗談じゃないわ」って。