小川君とふたりで来させたら、間違いなく殴っていたと思う。


「あ、あの……袴田君。実はお願いがあってここに来たんだ」


高広とは違う、本当に穏やかな声で語りかけながら武司に近づく小川君。


一度も話した事がないというのがわかる、オドオドした様子で。


「ほら、一緒に『カラダ探し』をやってるでしょ? 中島君が皆の邪魔をしていて、困ってるんだ。だからさ……袴田君に止めてもらいたいんだ」


武司の前で正座して、ひとつひとつの言葉をしっかりと、訴えるように話しているけど……武司には何も変化がない。


話を聞いてくれているとは思うけど、反応がないから武司がどう思っているかはわからないかな。


「僕は……袴田君と伊勢君に憧れてたんだよ。強くて、誰にでも堂々と意見できるから。そんな袴田君が、動かないで毎日死んでるのは悔しいよ」


膝の上に置いた手を、グッと握りしめて、小川君は震えていた。


どれだけ話しても、武司は小川君の言葉に反応を示す事はなかった。


小川君にしてみれば、ありったけの勇気を振り絞っての話だったに違いない。