「さてと、どうすっかな。やっぱりまずは一発殴った方がいいんじゃねぇか?」
中島君を止めてもらうように頼みに来たんじゃないの?
それがどうして殴るなんて事になるのよ。
「約束したでしょ? 殴るのはダメだって」
「そう言われてもな……小川、お前から言ってみるか?」
殴る以外の選択肢が見当たらないのか、肝心な部分を小川君に振る。
「えっ!? 僕!? は、袴田君と話した事はないけど……頑張ってみるよ」
本当に大丈夫かな。
それなら私が……なんて言ったら、ふたりは喜んで私に話させようとするんだろうな。
だから言わない。
玄関のドアを開け、「昨日」と同じように勝手に中に入った私達。
階段を上がり、武司の部屋のドアを開けると、壁にもたれてうな垂れる武司が、「昨日」と同じ場所にいたのだ。
「よう武司。話には聞いてたけどよ、ずいぶん腑抜けになってるな」
私に止められたからか、いきなり殴りかかるという事はなさそうだ。
でも、穏やかそうに聞こえるけど、顔は全然穏やかじゃないよ。