日菜子もそう思ってるのか。
でも、あんな風になった武司をどうやってやる気にさせればいいんだろう。
高広でもダメ、結子でもダメなのに、何をすればいいのか。
答えが出ないまま、ボーッと屋上から階下を見ていると……ひとりの生徒が、生徒玄関に入っていくのが見えた。
あれは……中島君?
電車を1本遅らせてきたのだろう。
別段慌てている様子もなく、落ち着いた感じで。
「皆、中島君が来たよ」
振り返ってそう言うと、この場にある種の緊張感が流れる。
中島君が私に文句を言うために、ここに来るかもしれないと考えると、一気に不安が増す。
大丈夫、ここには高広も遥もいると自分に言い聞かせても、罪悪感が再び湧いてきて胸が苦しい。
私は悪くないと思いたいのに、人を切って悪くないはずがない。
そんな私よりも怯えているのは……小川君。
「赤い人」を押しつけられたなら、中島君に対して怒ってもおかしくないのに。
「小川君、大丈夫? 震えてるみたいだけど」
「だ、大丈夫……いつもの事だから」
そんなに震えるのがいつもの事なの?