「カラダ探し」の中で増幅される負の感情。
流されたくない。
負けたくないと思ってはいたものの……カッとなった私は、左手を制服のポケットに入れた。
工業棟の準備室で、何かの役に立つかもしれないと入れておいたもの。
工業科の生徒が使う、恐ろしく切れるという折り畳みのナイフ。
それを取り出し、中島君につかまれている手に近づけて、両手で刃を出した。
暗いという事と、一瞬の事で中島君には私が何をしているのかわからない様子で。
上方から振り下ろしたナイフが、何かに当たったと感じた時、つかまれていた私の腕が自由になったのだ。
「え? あ、ああああっ!! な、何を……痛っ、痛いっ!!」
ドクドクと、ナイフで切られた手首から、血液が床に流れ落ちる。
慌てて傷口を押さえようとするけど、こうなったらもう助からない。
血は、絶対に止まらないと高広が言っていたから。
それを……私がやったのかと思うと、ナイフを持つ手が震える。
怒りと憎しみに身を委ねて振ったナイフで……押し潰されそうなほどの不安と後悔が私に押しよせていた。
床に崩れ落ちて手首を押さえる中島君。