ギリギリと、腕を握り潰すかと思うほどの力で。


皮膚に中島君の爪が食い込む。


するどい痛みが腕を伝って全身を駆け巡っているようで、とてもじゃないけど耐えきれない。


「痛いっ! は、放してよ!!」


「痛いのは俺の方だよ。わからないな森崎さん。キミに殴られる意味がわからない」


「赤い人」ほどではないにしても、背筋がゾクッとするほどの冷たい眼差し。


この目は……本気だ。


そう感じたのは、中島君が振り上げた手が、私の頬を叩いた直後だった。


さっきのお返しと言うにはあまりに重い一撃に、私は床に膝をついた。


一瞬、目の前が真っ白になって、何が起こったのかわからなかったけど……頬の痛みが、すぐに憎しみに変わる感覚に包まれて、私は中島君をにらみつける。










「キャハハハハハッ!!」













小川君の後……遥か日菜子が「赤い人」に追われているのだろう。


ここで腕を握られたままでは、追われている誰かか、中島君か私。


いや、この状況では間違いなく、私が生け贄にされてしまう事は目に見えている。


荒くなる呼吸。