「俺がひとりで全部見つけるって約束しただろ? そのためには、危なくなったら助けてくれないとな」


その言葉は、今までに私が聞いたどんなモノよりも冷酷だった。


感情を爆発させて、自分が助かる事に必死になっていたわけじゃない。


逃げた先に偶然人がいたわけでもない。


私達が工業棟にいる事を知った上で、自分が危険にさらされたら「赤い人」を押しつけようと決めていたのだ。


ただ、それだけの存在としか思っていない。


「本当に……あんたひとりでカラダを全部見つけられると思ってるの? そんな事が協力だって思ってるの!?」


私の言葉に、驚いたように中島君が目を丸くする。


まるで、私がおかしい事を言っているかのように。


「あのさ、森崎さん。わかるだろ? 俺と小川がいたら、より動ける俺のために小川が身代わりになった方がいいに決まってる。あんなトロいデブは、それくらいしか使い道がないんだよ」


と、言い終わる前に中島君に近づき、私は右手を振り上げてその頬を叩いた。






パンッという音が廊下に響く。






次の瞬間、怒りに満ちた目を向けた中島君は、頬を張った私の腕をつかんだのだ。