せめて座り心地のいい椅子に……なんて、余計なお世話だったんだ。


武司の事を考えたら、パッと見ただけではわからない場所に、隠れるようにするべきだったね。


自分がやった事を後悔しながら、私は棺桶に向かった。


幸恵の体形にくり抜かれた棺桶の内部。


その頭の部分にカラダを納めて。


「これで……ひとつ」


まだ7つも残っているのかと考えて、まだまだ先は長いなと溜め息を吐いた。


工業棟に戻らないと……。


嘔吐して胸の辺りが気持ち悪いけど、「赤い人」は気遣ってなんてくれない。


今、どこにいるのかはわからないけれど、中島君が引きつけている間に調べよう。


立ち上がった私は、フラフラとした足取りでホールから出て、工業棟に向かうために階段を上り始めた。


気持ち悪くても、耳だけはしっかりと澄ませて。


一階と二階の間の踊り場。


「赤い人」を引き連れた中島君が、いつこの前を通るかわからない。


気持ち悪さと、殺意に満ちた空気の中、どうか来ませんようにとゆっくり階段を上がる。