「ゼンさん!みなみ!」


私はもどかしく鍵を開け、玄関に飛び込んだ。

すると、そこには憔悴しきったゼンさんと腕の中でギャン泣きのみなみが……。


「ぜっ……ゼンさんっ!」


私は荷物を上がりかまちに置くと、ともかく靴を脱ぎ、みなみを受けとる。

ゼンさんは見たこともないほど疲れきっていた。元来彼はタフだ。
どれほど忙しくても、困難な案件を抱えていても、粘り強く仕事にあたり、精神的に負けない人だ。
そんな彼が、がっくりと肩を落とし、ぐったり疲れきった様子。


「すまん、おまえが出てから一時間半、泣きっぱなしだった」


ゼンさんはとてつもなく悔しそうに言った。
きっと、彼はみなみを泣き止ませることなど雑作もないと思っていたのだ。
寝かしつけることすらできると思っていたのだ。実際、夜の寝かしつけは何度かやってくれている。