お義母さんは私とみなみをちらりと見上げて、すぐに視線を膝付近の布団に戻した。一度あっただけの私のことなんか、覚えているはずもない。


「赤ちゃんが産まれたので、お見せしにきました」


私は思いきって、みなみをお義母さんの膝の上にのせてみた。

みなみはお座りをして、お義母さんの顔を見ている。泣き出しはしない。人見知りもしていない。
ただ、お義母さんの顔をじっと見つめている。

私はみなみが倒れないよう、後ろから支えながら固唾を飲んで二人の対面を見守った。

お義母さんはみなみを見ていた。

私は以前のような変化を期待した。不意に覚醒し、あわよくばゼンさんのことも何か思い出してくれるのではないか。

しかし、お義母さんの表情にも瞳の色にも変化は起こらなかった。
彼女はただぼんやりと目の前にいる小さな生き物を視界に捉えているだけ。

動いたのはみなみだ。

小さな手でお義母さんの人差し指をぎゅっと捕まえたのだ。
みなみには目の前の人間が、自分の肉親だとわかるのだろうか。人見知りせず、むしろ意思的にみなみはお義母さんの指を握っているように見えた。
私は手出しせずに見守る。