社長は自嘲的に笑った。
彼のしていることを悪く言うのは彼自身だけだ。

私から見たら、それはただの愛だ。
献身的な情愛にしか見えない。


「佐波くんには感謝してもしきれないな」


「急に何ですか」


社長がいきなり言うので、私は茶化そうと明るい声を出す。

社長は少し微笑んで言った。


「僕の好きな人の血を次に繋げてくれたのは、きみだからね。本当にありがとう」


そんなことを言われたら、茶化せなくなってしまう。

私たちはそれぞれ座り、みなみを眺めてゼンさんを待った。



やがて、ゼンさんが私たちを探し当てて戻ってきた。
思ったより早く、30分もかからなかった。


「どうだった?」


心配げな顔をする社長。その隣のベンチに腰掛け、ゼンさんは曖昧な表情で頷いた。