私は後部座席から手を伸ばし、彼の左腕に触れた。 「私とみなみがいる」 私は言い切った。なるべく、静かに落ち着いて、彼の心に届くように。 「ゼンさんの傍には私とみなみがいる」 彼の抱える圧倒的な不安は拭えないかもしれないけれど。 それでも、私たちは傍にいる。家族だから、彼の痛みに寄り添いたい。 ゼンさんは前を見たままだった。 でも、彼の右手が私の手の甲をしっかりと包んだ。