「あ……あの、私『産後うつ』なんですか?」


「そう、決め付けるのは早いわね。でも、産後のホルモンがいたずらして、一色さんを苦しめている。それは確かかな?」


天地さんはにっこり笑って言った。


「一色さん、みなみちゃんを可愛く思えない。苦しい。それは、あなたのホルモンが思わせてることなの。だから、一色さんが母親失格なのでも、母性がないのでもない。一時的に、身体の作用でそうなっているだけ」


「私の身体が……」


みなみを愛せないのは、私のホルモンのせい?
それは、想像もつかない『理由』だった。


「もちろん、『産後うつ』を甘く見てはいけません。身体的症状が苦しかったり、お子さんや自分を害しそうになってしまう人もいます。投薬治療が必要になる人もいます。
でも、多くの方が、この時期を過ぎると不思議と症状が快癒していくのも事実。
一色さん、みなみちゃんのことで一生懸命になりすぎてたのかもしれないね。ご自分の心も忘れず見てあげて。元気かな?って声をかけてあげて」