ゼンさんは抱っこひもに入れて近所を散歩したり、哺乳瓶の乳首を変えてみたり、色々試した。

でも、みなみは泣き止まない。
むしろ、飽くまでも母乳のみを追求する姿は、凄まじい執念と根性を感じさせたそうだ。


「今夜は眠らないつもりでいたから、起きる分にはいいんだが、泣き通しなのには困った。みなみも腹が減っているだろうに、頑としてミルクは飲まないんだ」


みなみにとってごはんは私の母乳のみだ。
彼女の意識はそうなっている。

だから、哺乳瓶もミルクの味も、『ごはん』と認識できないのだ。


「そこで発想の転換を図ることにした」


ゼンさんは冷凍庫に保存してあった私の母乳を解凍したのだ。
湯煎で解凍できるようになっているパックをありったけ解凍し、哺乳瓶に入れる。

温度を調整し、みなみに与えると、最初こそ変な顔をして泣いていたみなみが味に気付いた。


『いつもの味!』と脳が認識したらしく、みなみはようやく哺乳瓶から飲むことに成功したそうだ。

それが朝の5時。