今や、ちらし寿司を作る気力も、食べる気力もない私。

ゼンさんは買ってしまったお刺身をそのまま自分のおつまみに変更し、私のために雑炊を作ってくれた。

ゼンさんは料理ができる。
といっても、必要に迫られなければやらないそうなので、今日はまさにその時らしい。

ちなみに私たちが退院した日の豪華な夕食は、年上部下の和泉さんにレシピサイトのオススメを教えてもらったとのこと。


「食べられるか?」


ぐずり始めたみなみを抱っこしてくれ、私を食卓に連れて行くゼンさん。
湯気のあがる雑炊はとても美味しそう。

食欲はイマイチないけれど、おっぱいのため、早く回復するため、れんげを手に取る。

熱々な雑炊はきっとすごく美味しいはず。
だけど、熱のせいなのか、味がよくわからなかった。

せっかく作ってくれたゼンさんには笑顔で
「美味しい」
と伝えておく。

味はわからなくても、彼の気持ちは嬉しい。