「大丈夫か、佐波。悲鳴が聞こえたぞ」


車に乗り込み、ゼンさんが苦笑いしていることに気付く。

絶対、この人、お産の大騒ぎを思い出してる。
あの時、絶叫してた私を思い出して、この苦笑いに違いない。


「大丈夫じゃない!!」


私はプンプン怒りながら答えた。
ゼンさんが悪いわけじゃないけど、この災難をどこにぶつけたらいいかわからない。

とにかく痛かった!!
今も熱で苦しいし!!


「みなみー、帰ったら新鮮なおっぱいをあげるからねー!」


腹立ち紛れに、チャイルドシートのみなみに向かい、声を張り上げる。
散々痛い想いして古い母乳を絞られたんだから、これから出るのは新鮮でおいしいおっぱいのはずだ。

みなみは寝起きでぼけっとした顔をしていた。
目はやっぱり半分くらい二重になりかけていた。