ひろっぱの端でキキィ……と鈍い金属音をたてながら自転車を止めると、ゆりあは自転車の荷台からひょこりと降り、ひろっぱの真ん中へ向かって走っていった。


僕の方を振り返って手を振るきみを見て、本当に小さなこどもみたいだなあと思いながらも僕はそんなきみに手を振り返すのだから、僕もこどもだということだろうか。


「優太、シャボン玉持ってきて。さっき、商店街のお店で買ったでしょ?」


大きな声で叫ぶゆりあにこくりと頷いた僕は、自転車のかごに入れていた袋からシャボン玉セットを取り出すと、ゆりあの待つ場所へ足を進める。


僕が足を踏みしめるたびに鼓膜に届くサクッと草を踏んでいる音。


草を踏んだときこうして音がたつのは、草が新鮮な証拠だと昔どこかで聞いたことがあるから、きっとここのひろっぱの草は新鮮な草なのだろう。


ひろっぱの真ん中へようやくたどり着くと、ゆりあは頬を膨らませながらいじけていた。


「遅いよ。優太は、わたしがきてって言ったら走ってこなきゃいけないの。わかった?」


ゆりあはそう言うけれど。


いや、どんなわがままなんだと思いながら、僕は笑う。


「はいはい、ごめんね、ゆりあ」


こうして謝ってしまう僕は、もうきっと周りから見れば都合のいいように扱われている彼氏のように見えるのだろう。


だけど、僕はそれでいい。


だってほら、ゆりあのこのいたずらっ子で楽しそうな顔が見えるのだから。


「しょうがないから許してあげる」


素直にいいよと言えないゆりあが、僕にとってはこんなにも可愛くて仕方がない。