小さな頃から誰かが好きだという気持ちがわからなかった僕にとってはゆりあが遅れてきた初恋であり、17年生きてきて初めてできた恋人であり、とても大切にしていたつもりだ。
友達からの評価を気にするわけじゃないけどさ、僕の友達からは、
“お前は本当、彼女を大切にしてて、尊敬するよ”
なんて言われていた。
だけどそれは、彼女が本当に大切であったからで。
彼女は消極的な僕とはまるで違い、いつも僕を光のあるほうへと手を引っ張って連れていってくれた。
きみは、僕にとってかけがえのない存在。
いつか僕がそういったとき、きみは照れながら笑ってくれたよね。
時にいじっぱりで頑固なきみだけど、誰よりも僕のことを好きでいてくれて、“優太が好きだよ”とそうきちんと口に出してくれるから、僕は不安にならなくてよかった。
毎日が本当に幸せだった。
それはもうこれ以上にないってくらいに、きみと過ごす日々は幸せに満ちあふれていた。
……だけど、そんな日々は何の前触れもなく、消え去ってしまったんだ。
僕の大切なきみはあの日、たくさんの人に惜しまれながら空の旅へと旅立った。
「……ゆりあ」
きみの名前を暗闇の中に呟いてみても、何も返ってはこない。
ただ自分の声が小さく響いて、それからスゥーっと呑み込まれるように音沙汰もなく消えた。