午前0時前。
僕は両親に、友達の家に泊まると嘘をついて、自宅から二駅ぶん離れた場所にある海辺にきていた。
空はもちろんのこと真っ黒で、この場所にいるのは砂浜で膝をかかえて座り込む僕だけ。
いつもの青々とした爽快な海ではなく、暗がりの中広がる海はどこまでも黒く、心までもが暗闇の底に沈んでしまいそうに感じる。
だけど不思議と恐怖はなくて、心地いいなあと思ってしまう。
……それにしても、僕はここで何をしているのだろう。
どうしてこんなところに?
なにをするために?
自分にいくら問いただしてみても、答えはでてこない。
まるで体が答えを出すことを拒んでいるかのように、汗がじんわりと滲んでくる。
夏の夜は、昼間よりも格段に涼しい。
……なのに、汗が額や頬を伝う。
その理由は僕にもわからないけれど、きみをなくしたその日から僕の心がSOSを出しているのは知っていた。
僕は1ヶ月前、約1年間付き合っていた恋人のゆりあを交通事故で亡くした。
死因は、相手の車による完全な信号無視での事故だった。