ゆりあは声をくぐもらせ、僕の背中に両腕をまわすと、背中側のシャツをくしゃっと握る。
「優太のばか」
「……ん」
「ほんとっ、ばかだね」
「そんなこと、とっくに知ってるよ」
「……でも、それでこそ私の好きになった優太だ」
「ははっ、なんだよそれ」
ときにいじっぱりで素直になれないきみのことだから、今の言葉がきみなりの“ありがとう”だということを僕は知っている。
だから思わず、笑いがこぼれた。
なんだ、あの頃と、1ヶ月前と、なんの変わりもないじゃないか。
きみは変わらずそのままきみで、僕たちのやりとりもなんにも変わらない。
そんな些細で当たり前のことが、とても嬉しく思えた。