千春と芽衣には知っておいてもらわなければ。
彼女達がどう思うかわからなくて、不安だけど……。
「莉子ちゃん、事故で頭を強くぶつけたの。
その影響で……ふたりの顔が判別できなくなっちゃってる」
「えっ?」
目を見開いて驚いたのは千春。
芽衣は険しい顔をした。
「それじゃあ、私達のこと、覚えてないの?」
千春がいつものようにハキハキと質問する。
「そうじゃないの。
記憶はきちんと残ってるから、ふたりのことはよくわかってる。
それに、これからの記憶もおそらく大丈夫」
「どういうこと?」
泣きそうな顔をした芽衣が、私のそばにやってきて顔を覗き込む。
「目や鼻といったパーツはきちんと認識できる。
人の顔だということもわかる。
だけど、ふたりがどう違うのか、わからない……」