「また和代先輩、か……」
「仕方ないよ。響ちゃんの彼女なんだもん」
そう。
和代先輩は半年ほど前にできた響ちゃんの彼女だ。
和代先輩の告白に押し切られる形で付き合い始めたようだけど、美男美女のカップルだと校内でも有名だ。
「でもさ、莉子だって、響先輩のこと好きだ……」
「言わないの!」
芽衣の口を思わず押えた。
響ちゃんのことは、ずっと前から好きだ。
小さな頃からいつも一緒に過ごして、彼のことはなんでも知っていて……。
ひとつ年上の響ちゃんは、いつだって私のヒーローだった。
幼稚園の頃、犬にワンワン吠えられて泣いていた時だって、震えながらも「莉子は俺が守る!」なんて私の前に立ちふさがってくれたし、小学生になってからも、困ったことがあると最初に気が付くのは響ちゃんだった。