どれくらい泣いただろう。
少しだけ落ち着いてくると、野上先生は他愛のない話を始めた。


「長瀬さん、彼氏いるの?」

「……はい」


そういえば……事故の時、哲哉先輩がそばにいたはずだ。
先輩、どうしているだろう。


「やっぱりそうか。
あなたが眠っている間、会えないのに毎日毎日やってきて、ずっと廊下にいた男の子がいたもんね」

「そう、なんですか?」


先輩、そんなに心配してくれたんだ……。


「いいわよね。若いって。
でも、私もなかなか素敵な恋したんだー」

「それって旦那さん、ですか?」

「うん」


本当にうれしそうな顔で微笑む野上先生の言葉に嘘はないだろう。


「恋バナなんて、他の先生は聞いてくれないだろうけど、私はOKだから」


クスッと笑う先生はとてもチャーミングなお医者様。