野上先生は何枚も何枚もティッシュを差し出してくれる。
決して泣き止みなさいとは言わない。


「長瀬さん」


優しい声で私に呼びかけた先生は、私の手をそっと握った。


「こういった告知をずっと濁しておく先生もいるのよ。
でもね、私はそうはしないの。
だって、自分のことを自分が知らないって一番不安でしょ?
ショックなこともいっぱいあるけど、必ず道はあるわ」


そんなこと言ったって……今はそんな前向きにはなれない。
私は首を振って抵抗する。

この先に道なんて、ない。

だって誰のこともわからないなんて……これからどうやって生きていったらいいの?


「でもね、こうしてはっきり言ったからには、私が絶対に責任を持つ。それだけは信じて」


野上先生の言葉は、大きなショックを受けた私の支えになるだろうか。