「先天的――つまり、生まれつきこういう人もいるの。

その人達は、今の長瀬さんのように顔が判断できずに、他の要素で誰かを探ったりしてる。
たとえば、いつも持っているバッグとか、つけている香水とか声とか、ね」


私……さっきバッグを見て母だと思った。

まさに先生の言っている通りだ。
だけど、そんな人達がいるなんて聞いたこともない。


「ただ、さっきのテストの結果だと、幸い表情の変化はわかるみたいね。
もっとひどいと、喜怒哀楽も見分けがつかなくなるのよ」


最悪の事態は避けられたということ?
とはいえ、顔が判断できないって、普通に生活できるの?

ドンドン不安になっていく。


「私……治り、ますか?」


一番重要なのは、治るかどうかだ。
一時的なものなら、しばらく我慢すればいい。