「そう。それじゃ、次は?」
その隣は、口角をあげて笑っている。
「……うれしい」
「正解。最後は?」
今度は眉毛がつり上がっている。
「怒ってる……」
「全部正解よ。こっちは問題なしね」
野上先生はホッとした顔でつぶやいた。
なんのテスト、なの?
こんなの小さな子だって答えられる。
「長瀬さん」
野上先生はカルテを膝の上に置くと、真っ直ぐに私を見つめる。
「お父さんやお母さんの顔がわからないということと、記憶に混乱はないことから、私の頭の中にひとつの病名が浮かんでます」
病名……。
「もう少し詳しく検査してから話してもいいけど、検査も順番待ちなの。
当然命にかかわる症例が優先されるし」
それはもちろんだ。