さっき来てくれた先生ではないようだ。

だけど、それがわかったのは、声が高めで髪が長く、体つきが細身で、その人が女だとわかったから。

さっき来てくれたのは、おそらく男の先生。
もっと肩幅があって、声も低かった。


顔では判断がつかなかった私は、茫然と先生を見つめた。


「初めまして。心療内科の野上(のがみ)です」


にっこり笑って頭を下げた先生は、柔らかい雰囲気を醸し出していて、私のイメージする大病院の医師とは程遠い印象だ。


「お母さんですね。
莉子さんは大きな事故で精神的にも疲れていらっしゃいます。
これから外科と一緒に心の衝撃も治療しますね。
すみません、莉子さんとお話ししたいので少し席を外していただけますか?」


野上先生は丁寧に頭を下げて、母を病室から出した。