「あの……」
白湯のおかげで口が滑らかになった私は、口を開いた。
「昨日来ていたのは、本当に私の両親ですか?」
「はっ?」
看護師さんは突拍子もない質問に驚いているようだ。
「すみません。なんでもないです」
「いえ。大切なことです。長瀬さん、ご自分の名前、おわかりでしたよね」
「はい。私は長瀬莉子、です」
「先生、呼んできます」
顔色を変えた看護師さんは、点滴の速度を確認すると、すぐに部屋を出て行った。
先生はなかなか来なかった。
いや、私がそう感じただけなのかもしれない。
「長瀬さん」
白衣を翻してやってきた先生は、昨日の先生だろうか。
それすらわからない。