それからふと不安がよぎる。
お父さんとお母さんのことも、自分が誰なのかも、響ちゃんのことも全部全部覚えている。
それなのに、さっき泣いていた人が、お父さんとお母さんだとはわからなかった。
先生が『記憶障害はなさそう』と言っていたのに、わからなかったのだ。
私……どうしちゃったの?
ドクンドクンと心臓が血液を送り出すたびに、こめかみのあたりが疼く。
なにを考えても考えがまとまらないのは、事故のせいなのだろうか。
看護師が点滴から入れた鎮痛剤が効いてきたのか、その後すぐに私は意識を手放した。
次に目を覚ましたのは、看護師が病室に入ってきたときだった。
そのままずっと眠っていたいほどの倦怠感に襲われていた私は、やっとのことでうっすらと目を開けた。