「あなたの名前は? フルネームで」

「長瀬莉子」


やっぱり口がカラカラに渇いていて、うまく声が出せない。
やっと振り絞った声も、自分の声ではないみたいだ。


「何歳かな?」

「十六歳」

「どこの高校?」

「清和……」


そこで疲れて話せなくなり、目を閉じた。


「莉子?」

「お母さん、大丈夫ですよ。
三日間も眠っていたんです。無理は禁物です」


お母さん?
この人が私の?

懸命になにかを考えようとしたけれど、激しい頭痛が私を襲う。


「とりあえず、心配していた記憶障害はなさそうですから、ゆっくり休ませてあげてください」


私が再び目を開けると、先生は「眠ってもいいですよ」と言ってくれる。

だけど、頭痛だけでなく全身の痛みが激しくなって、顔をしかめる。

とても眠れそうにない。