「あの、ハンカチが汚れてしまっていますが……」

「気にしないでください。もうお母さんから離れたらダメだよ」


少し泣き止んできた女の子の頭を撫でると、目をこすりながらコクンとうなずいてくれた。


「莉子、すごいな。俺なんて焦っちゃってなにもできないよ」

「小さい頃、隣の家のおばさんがよくそうやって治療してくれたから。看護師さんだったの」


響ちゃんのお母さんは私達が庭で転ぶと、「消毒よりお水できれいにした方がいいのよ」と傷口を洗い流してくれた。


「おばさん、すごく優しくて、私も看護師さんになりたいなって思ってるんです」

「そうなんだ」


私の将来の夢は、響ちゃんのお母さんのような看護師だ。

本当は、お父さんの跡を継いで医師を目指していた響ちゃんの影響の方が大きいけれど。