「莉子!」


あとから追いかけてきた先輩が、私の隣にしゃがみ込む。


「先輩、どこかに水道ないですか?」

「水道、水道……あそこだ」


ハンカチで傷口を圧迫した後、女の子を抱き上げて、先輩の探してくれた水道に走る。


「大丈夫だよ。ばい菌が入るから洗うよ。靴下脱ごうね」


泣き止まない女の子を懸命になだめながら、水道の蛇口をひねった。


「痛いの痛いの、とんでいけー」


精一杯優しく語りかけながら、傷口を洗い流す。


「どうされました?」


その時、スタッフの人が私達に気が付いて駆け寄ってきた。


「あの、この子、多分迷子です。転んでしまって」

「そうなんですね。ありがとうございます。あとは私達が」


スタッフの優しそうなお姉さんに女の子を預けてホッとした。