彼の手からオレンジジュースを受け取ると、目の前を小さな女の子がすごい勢いで走って行くのが見える。
まだ歩き始めたばかりというようなおぼつかない足取りで。


お母さんは、どこ?
キョロキョロ辺りを見渡しても、それらしき人が見当たらない。


「先輩。あの子、危ないよ」


私は先輩にジュースを押し付けると、女の子を追いかけた。
少し坂道になっているからか、勢いがつきすぎて止まれない様に見えたのだ。


「危ない。止まって!」


ヨチヨチ歩きのはずなのに、意外とスピードが出ている。


「あっ!」


手が届きそうなところまで追いついたのに、女の子が派手に転んでしまった。


「うわわわわわーん」


大声で泣き始めた女の子をすぐに抱き上げると、顔をクシャクシャにして泣いている。
それに、膝から出血している。