先輩は私の手をさり気なく握った。
手をつないだのは、これが初めてだ。


照れくさくてうつむくと、先輩は私の手を一層強く握った。

それから電車に一時間ほど揺られて遊園地に着くと、彼は主導権を握って動き始めた。


「莉子、絶叫系、いける?」

「うーん。あんまり得意じゃないかも」


「そっか……」と言って連れて行ってくれたのは、メリーゴーランドだ。


「えー、先輩、もしかしてこれ?」

「そうそう」


冗談かと思ったけど、先輩は真顔だ。


「乗るぞー」


小さな子に混ざって並んだ私達は、待っている間もたくさんのおしゃべりをした。


「莉子って、なにをするのが好き?」

「うーん。お菓子作りとか、かな」

「じゃあ、今度作ってよ」


満面の笑みの先輩と付き合うことにしてよかったと思う。