「うん。まぁ、ね」
「哲哉先輩、とびっきり優しそうだもん」
「うん。優しいよ」
「のろけてるわ」
芽衣が呆れ顔でクスクス笑う。
だけど、朝の新山家への訪問だけは続いていた。
どちらの親にも私達の間に隔たりができたことを知られたくなかった……というのは、多分言い訳だ。
響ちゃんと私をつなぐ最後の細い線を切る勇気が、どうしてもなかった。
あれから響ちゃんはなにも言わない。
彼の部屋の前で声をかけ、おばさんの作ってくれたフレッシュジュースを一気に飲み干して、先輩の待つコンビニに向かう。
もちろん、こんなことをしているのは先輩には内緒だ。
「莉子、明日の土曜、デートしようか」
「いいですよ?」
「じゃ、九時に駅で」
ふたつ返事だった。
先輩といると楽しいし、 響ちゃんのことを忘れられた。