名前すら知らないその先輩は、私よりずっとスタイルもよく、顔だってかわいらしい。
ほんのりピンクの唇はプルプルだったし、きちんとビューラーでカールされた睫毛の下の目も大きい。


先輩は私を中庭に連れて行くと、突然口を開いた。


「あなた、調子に乗ってるんじゃないの?」

「いえ……」


哲哉先輩との交際のことだ。
だけど、つき合ってほしいと言ってきたのは、哲哉先輩の方だ。


「哲哉君があなたを選ぶなんて、考えられない。皆もそう言ってるわ」


先輩は感情をむき出しにして、私に突っかかってくる。


「……はい」

「はいって、バカにしてるの?」


そんなことを言われたって、私にどうしろと?


「いいえ」


「はい」か「いいえ」しか言わない私に怒り狂った先輩は、私の肩をつかんで言葉を荒げる。