「どうして、泣いてる?」
顔を覗き込まれた私は、慌てて頬の涙を拭ったけれど、彼は視線をそらさない。
「どうして、かな……」
響ちゃんの、バカ。バカ、バカ!
あなたが和代先輩と、キスなんてするからよ!
私は彼の手を振り切って、駆けだした。
待ち合わせたコンビニの前で先輩を見つけた私は、気合を入れて笑顔を作った。
「おはようございます。平松先輩」
「莉子、おはよ」
私達の前を通りかかる同じ学校の生徒が、私の顔をチラチラ見ている。
先輩は人気者なのだ。
私なんかじゃ釣り合わないと思われているのかもしれない。
「行こうか」
私を促した先輩と肩を並べて歩くのは、まだ慣れない。