早く飲んで出なくちゃ。
響ちゃんが下りてくる前に。

一気にジュースを喉に送りこんだ。


「今日はなんのジュース?」


あと一口で飲み終わるはずだったのに、後ろから彼の声が聞こえてきた。
間に合わなかったようだ。


「ごちそうさま。行くね」


響ちゃんに背を向けたまま、ゴクンと最後まで飲み干したジュースのコップをシンクに運ぶ。


「彼氏ができたら、俺の顔も見たくないってことか」


冷たい響ちゃんの言葉に、歯を食いしばる。

そんなわけ、ない。
平松先輩のことより彼のことで頭がいっぱいなんだから。

それでも私はなにも言えずに、置いてあったカバンを持ってリビングを出ようと、した。


「莉子」


だけどできなかったのは、響ちゃんに腕をつかまれたからだ。