響ちゃんのキスに、こんなにショックを受けているなんて、変かもしれない。
元々彼は、私のモノじゃなかったのだから。
だけど、これでもう“幼馴染みの響ちゃん”も失ってしまった。
あんな啖呵を切ったからには、今まで通りにはいかないだろう。
とはいえ、私が選んだ道。
響ちゃんが私のことを、"隣に住んでいる幼馴染み"としか見られないのだから、私は別の道を進むしかない。
「先輩、ドーナツ食べて帰りませんか?」
「ドーナツ?」
落ちこんでいた私が突然そんなことを言ったからか、先輩は驚いている。
「甘い物、ダメですか?」
「いや、結構好きだよ。もちろん、ドーナツも」
こうやって先輩を知っていこう。
そして、響ちゃんを、忘れて……いこう。
ドーナツショップで私ははしゃいだ。
頬の涙のあとがまだ乾かぬうちに。
だって、もうこうするしか、ないのだ。