「千春」


うつむいた私に助け舟を出してくれたのは、芽衣だった。


「次、音楽室だね。そろそろ行こ?」

「う、うん……」


納得していない千春も、私の様子がいつもと違うことに気がついたのだと思う。
それからは、深く聞いてくることはなかった。


それでもずっと隠しておくことはできない。
平松先輩と一緒にいれば、すぐにバレることだ。


昼休み、芽衣と千春と一緒にお弁当を食べると、ふたりを中庭に誘った。
食欲もなかった私を心配していたふたりは、眉をひそめながらついてきてくれた。


「あのね……」


私がもう葉になってしまった桜の木の下で口を開くと、ふたりは小さくうなずく。


「私……平松先輩と、付き合う」

「はっ?」


すごく驚いた様子の芽衣は、私に一歩近づいた。