「そんなことより、遅刻するぞ」
やっぱり泣いてしまう私の頭をクシャッと撫でた彼は、バタートーストをくわえながら、おいしそうなオムレツにフォークを入れ少しちぎると、私の口の前に差し出した。
「どうせ横取りするんだろ」
「うん!」
彼のフォークからパクッと食べたオムレツは、今までで一番おいしかった。
パクパク食べる響ちゃんの横でジュースを飲み干すと、ふたりで家を駆けだす。
「雨降りそうじゃん」
「降らないよ」
空は厚い雲で覆われている。
そういえば……哲哉先輩のフリをしていた響ちゃんが、私を雨女だって言ってたな。
フェイスブラインドになる前は、彼の後ろを追いかけるようについていったのに、今日は違う。
彼が私の手を離さないから。