気が付けば、平松先輩との交際を受け入れていた。
ホームルームが始まる直前、教室に駆け込んだ。
「莉子、濡れてるよ」
「うん。ありがと」
私の濡れた左肩を心配してくれた芽衣にお礼を言ったものの、先輩とのことを口にできない。
だけど、私のカバンの中には、先輩の電話番号とアドレスが登録されたスマホが入っている。
ホームルームのあと、すぐに一限が続いた。
やっと休み時間になると、朝会えなかった千春がやって来た。
「莉子、おはよ。朝、どうしたのよ。響先輩?」
芽衣からなにも聞いていないらしい。
ズバリと切りこんできた千春に、私は首を振った。
「私、ね……」
一旦は口を開いたものの、それ以上言葉出てこない。
「平松先輩と付き合うことにしたの」と言えばいいだけのことなのに。