「バナナとね……」
「貸してみろ」
私の飲んでいたジュースをひったくるようにした彼は、ゴクンと大きな口で飲む。
「それ、私の!」
「いいじゃん、俺のやるから」
本当は間接キスに照れたんだけど……。
「メロンとニンジンだな」
「メロン!」
ジュースにするのはもったいない。
今までメロンなんて入っていたことはなかったのに。
「お袋、莉子にとびっきりうまいの飲ませるって、昨日あれからスーパーに行ったぞ?」
『莉子ちゃんの門出を祝って』と言ってくれたおばさんが、そんなことまでしてくれたなんて知らなかった。
「息子には冷たいのになぁ」
離婚から少し遠ざかっていた響ちゃんとおばさんとの距離も、元に戻ったのかもしれない。
響ちゃんの表情が明るい。