思わず視線をそらすと、彼は私をギュッと抱き寄せる。
彼の素肌に直に触れて、ドキドキが止まらない。


「だって俺達、結婚するんだぞ」

「響ちゃん……うん」


早すぎるプロポーズは、私の涙を誘った。


「さーて。新山響、遅刻しそうです」

「あっ、まずい」


慌てて立ち上がると、彼の部屋を飛び出す。

もう、ドキドキさせないで。
だけど……すごくすごくうれしかった。


「莉子、ジュースなに?」


階段を下りていると、響ちゃんの大きな声が聞こえる。


「待って、飲んでみる―」


私は慌ててリビングに戻った。

おばさんのスペシャルジュースは、私の大好きなバナナとあとは……。


「わかったのか?」


私が悩んでいると、制服に身を包んだ響ちゃんが、髪のくせを直しながら下りてきた。