響ちゃんの肩に顔を押し付けて、涙をこらえる。
そんなことを頼むのはどれだけ辛かっただろう。


「それから俺も前を向けるようになった。
親父に医学部の学費を出してもらえるように頼みに行った」


そうなの?

ハッと彼を見上げると、小さく頷いた。


「親父、そんなの当たり前だって言ってくれた。
それに、申し訳なかったって……。病院は俺のために頑張って残すからって……」


「全部莉子のおかげだよ」と囁くようにつぶやいた彼は、私を抱き寄せた。


私は、なにもしてないよ? 
ただ泣いていただけだもの。

響ちゃんが自分で辛い過去を乗り越えたんだ。


「莉子。俺が脳外科医になったら、隣でカルテを出してくれないか」


私の方に体を向けた彼は、真っ直ぐに私を見つめる。