「だから……勉強、やめちゃったの?」
彼は私の方を見て、小さく頷いた。
「そうしたら、なにもかもどうでもよくなって、陸上すらできなくなった。
そんな時に現れたのが和代だ」
和代先輩も、響ちゃんと同じように傷ついていたのかもしれない。
「俺達は互いの傷をなめ合うのに都合がよかった。
なにも言わなくたって、辛い気持ちが共有できたから。
それに、親父に仕返しができると思った」
彼が手をギュッと握りしめる。
たまらなくなった私は、彼の手に自分の手を重ねた。
「莉子? 聞きたくないよな」
「ううん。全部聞きたい。響ちゃんのこと、全部知っていたい」
彼は私の頭に手を回して、自分の肩に寄りかからせる。
いつの間にこんなに大きくなったのかな。
小学生の頃は、私より小さかったのに。